睡眠時無呼吸症候群
症状・疾患の概要
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に何度も呼吸が止まる、または著しく弱くなる病気です。これにより、睡眠が妨げられ、日中の眠気や疲労感、集中力の低下を引き起こすだけでなく、長期間放置すると高血圧や心疾患、脳卒中などのリスクが高まります。SASは、気道が閉塞する「閉塞型無呼吸」と、呼吸中枢の異常による「中枢型無呼吸」に分かれます。特に肥満のある中高年の男性や、いびきをかく方に多く見られます。
主な症状
SASの主な症状は、睡眠中に呼吸が止まることですが、本人は気づかないことが多く、周囲の人によって発見されることが一般的です。以下のような症状が現れることがあります。
いびき
大きないびきが特徴的です。特に無呼吸が起きる前後にいびきがひどくなることがよくあります。
日中の強い眠気
夜間に十分な睡眠が取れないため、日中に強い眠気が現れます。特に運転中や会議中など、集中が必要な場面でも眠気を感じることがあります。
疲労感
睡眠の質が悪く、浅い睡眠が続くため、起床時に疲れが取れない、日中に倦怠感や集中力の低下が見られます。
夜間の頻尿
睡眠中に何度もトイレに起きることがあります。無呼吸時に酸素不足が起こり、ホルモンバランスが乱れることで頻尿が引き起こされます。
頭痛や喉の乾き
朝起きた時に頭痛や喉の乾きを感じることがあります。特に無呼吸が頻発する人に多く見られる症状です。
診断と検査について
SASの診断には、睡眠中の呼吸状態を確認するための検査が行われます。自己判断が難しいため、医師による専門的な検査が必要です。
問診と視診
いびきの有無、日中の眠気の程度、睡眠中の呼吸停止を確認するために、家族やパートナーからの情報も重要です。また、肥満や首周りのサイズ、口の中や鼻の状態も診察します。
簡易検査
自宅で行える簡易検査として、睡眠中の呼吸と酸素濃度を測定する装置を使用します。簡易検査で異常が見つかった場合、詳細な検査(PSG)に進むことが一般的です。
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)
最も標準的な検査で、睡眠中の脳波、呼吸、血中酸素濃度、心拍数、筋電図などを測定します。これにより、睡眠中の無呼吸や低呼吸の頻度と程度を正確に診断できます。当院では自宅でも検査を行うことができます。
治療法について
SASの治療は、無呼吸を防ぎ、睡眠の質を向上させることが目的です。治療法は、生活習慣の改善、機械による補助、外科的手術などがあり、患者の状態に応じて選択されます。
生活習慣の改善
体重管理
肥満はSASの主な原因の一つであり、特に首周りの脂肪が気道を圧迫します。体重を減らすことで、無呼吸の頻度が減少します。
横向きで寝る習慣
仰向けで寝ると、舌が気道を塞ぎやすくなります。横向きで寝ることで気道が広がり、呼吸がしやすくなります。
アルコールと喫煙の制限
アルコールは筋肉を弛緩させ、気道が狭くなるため、特に寝る前の飲酒を避けることが推奨されます。喫煙も気道に炎症を引き起こし、無呼吸を悪化させます。
CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
CPAP(シーパップ)は、寝る時に鼻にマスクを装着し、空気を送り込んで気道を広げる治療法です。これにより、無呼吸を防ぎ、安定した呼吸を保ちながら睡眠を取ることができます。SAS治療の標準的な方法です。
マウスピース(口腔内装置)
軽度から中等度のSASの場合、マウスピースを使用することが有効です。下顎を前方に固定することで、気道の閉塞を防ぎます。
外科手術
鼻や喉の構造的な問題が原因で気道が狭くなっている場合、外科的手術で気道を広げることがあります。例えば、扁桃腺が大きい場合はその摘出が行われます。
予防方法
SASを予防するためには、日常生活の改善が重要です。特に体重管理や寝る姿勢に気を配ることが、無呼吸を防ぐための有効な手段です。
体重のコントロール
肥満はSASの大きなリスク要因であるため、適正な体重を維持することが大切です。バランスの取れた食事と運動を心がけましょう。
寝る前のアルコールと食事の制限
アルコールは筋肉の弛緩を促し、気道が塞がりやすくなります。また、満腹状態で寝ると呼吸が浅くなるため、寝る前の過食も避けましょう。
定期的な健康診断
SASは自覚症状がない場合も多いため、特に日中の眠気やいびきがある場合は、早めに医師に相談することが重要です。
よくある質問
Q1: いびきと無呼吸の違いは何ですか?
A1: いびきは気道が狭くなることで発生する音ですが、無呼吸は気道が完全に塞がり、一時的に呼吸が止まる状態です。いびきがある人の中でも無呼吸を伴う場合があり、その際は治療が必要です。
Q2: CPAP療法は一生続ける必要がありますか?
A2: CPAP療法は無呼吸を抑える非常に効果的な治療法ですが、症状が改善するまで継続する必要があります。肥満などの原因を解消できれば、治療が不要になることもありますが、医師の判断に従って治療を継続することが重要です。
Q3: 自宅でできる簡易検査はどのようなものですか?
A3: 自宅で行う簡易検査では、睡眠中の呼吸や血中酸素濃度を測定します。装置を身に着けて寝ることで、無呼吸の回数や呼吸の状態が確認できます。異常が見つかった場合は、より精密な検査が必要になることがあります。