脂質異常症

症状・疾患の概要

脂質異常症は、血液中の脂質（コレステロールや中性脂肪）のバランスが崩れ、異常に高い状態を指します。主に「悪玉コレステロール（LDLコレステロール）」の増加、「善玉コレステロール（HDLコレステロール）」の減少、中性脂肪の増加が脂質異常症に該当します。この状態が長期間続くと、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞など、重篤な循環器疾患を引き起こすリスクが高まります。症状は自覚されにくいですが、早期発見と予防が重要です​​。

主な症状

脂質異常症自体には明確な自覚症状がないため、定期的な健康診断での血液検査によって発見されることが多いです。しかし、放置すると動脈硬化の進行によって、以下のような症状が現れることがあります。

胸痛や息切れ
動脈硬化が進行すると、心臓への血流が減少し、胸痛や息切れを感じることがあります。

頭痛やめまい
血管の硬化が進むことで、脳への血流が減少し、頭痛やめまいが現れることがあります。

足のしびれや痛み
下肢の動脈が狭窄することで、足にしびれや痛みが生じることがあります。

脂質異常症は長期間進行する病気であり、重篤な疾患に発展する前に、早期に発見し、治療を始めることが重要です​。

診断と検査について

脂質異常症は、血液検査によって診断されます。以下の数値を基準に診断が行われます。

LDLコレステロール
LDLコレステロール（悪玉コレステロール）が140mg/dL以上の場合、脂質異常症と診断されることが一般的です。

HDLコレステロール
HDLコレステロール（善玉コレステロール）が40mg/dL未満の場合も、脂質異常症のリスクがあります。

中性脂肪（トリグリセリド）
中性脂肪の値が150mg/dL以上の場合、脂質異常症の疑いがあります​。

血液検査では、これらの項目を測定し、脂質異常症かどうかを判断します。また、動脈硬化の進行度を確認するために、心電図や超音波検査が行われることもあります​。

治療法について

脂質異常症の治療は、生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせて行われます。治療の目的は、血液中の脂質バランスを正常化し、動脈硬化の進行を防ぐことです。

生活習慣の改善

食事療法
脂質異常症の改善には、食事の見直しが基本です。飽和脂肪酸やコレステロールの多い食品（脂っこい食事、肉の脂身など）を控え、魚や野菜、食物繊維を多く摂取することが推奨されます。また、特に青魚に含まれるDHAやEPAは、血中の中性脂肪を減少させる効果があります​。

運動療法
適度な運動は、HDLコレステロールを増やし、中性脂肪を減らす効果があります。ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を週に150分以上行うことが推奨されます​。

禁煙・節酒
喫煙はHDLコレステロールを低下させ、動脈硬化を促進します。また、アルコールの過剰摂取は中性脂肪の増加を引き起こすため、禁煙や節酒が必要です​。

薬物療法

生活習慣の改善だけでは改善が見られない場合、薬物療法が導入されます。主な薬剤には、スタチン（HMG-CoA還元酵素阻害薬）、フィブラート、ニコチン酸誘導体などがあり、LDLコレステロールや中性脂肪の低下を促します。これらの薬は、医師の指示に従い、定期的に服用する必要があります​。

予防方法

脂質異常症は、日常生活の改善によって予防することが可能です。

バランスの取れた食事
野菜、果物、魚、全粒穀物を多く含むバランスの良い食事が、脂質異常症の予防に効果的です。特に青魚やオリーブオイルなどの不飽和脂肪酸を多く含む食品を取り入れることが推奨されます​。

定期的な運動
週に150分程度の有酸素運動が、脂質のバランスを整え、脂質異常症の予防に役立ちます。運動を習慣にすることで、長期的に健康を維持することが可能です​。

定期的な健康診断
脂質異常症は自覚症状がないため、定期的な健康診断で血中脂質の状態をチェックすることが重要です。早期発見と早期治療が、動脈硬化の進行を防ぐために役立ちます​。

よくある質問

Q1: 脂質異常症の治療にはどのくらいの期間がかかりますか？
A1: 脂質異常症の治療は長期的なものとなります。生活習慣の改善や薬物療法を続けることで、数ヶ月から1年程度で血液中の脂質が改善されることが多いですが、再発防止のために継続的な管理が必要です​。

Q2: 脂質異常症が放置されるとどうなりますか？
A2: 放置された脂質異常症は、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾患を引き起こすリスクが高まります。自覚症状がなくても定期的に血液検査を行い、適切な治療を受けることが大切です​。

Q3: 脂質異常症の予防にはどのような食事が良いですか？
A3: 食物繊維を多く含む野菜や果物、DHAやEPAを多く含む青魚、不飽和脂肪酸を含むオリーブオイルなどが良いとされています。また、加工食品やファストフードなど、コレステロールやトランス脂肪酸を多く含む食品は避けることが推奨されます​。